TFT(思考場療法)
TFTは、アメリカの心理療法家ロジャー・キャラハン博士によって開発されました。
1970年代後半、キャラハン博士のもとに一人の女性が訪れました。彼女は極度の水恐怖症でした。たらいの水を見ただけで恐怖を感じるため、子どもにシャワーを浴びさせることさえできませんでした。博士は心のケアの専門家として、様々な心理療法を試みましたが、水への恐怖は消えることはありませんでした。
ある日彼女は「水のことを考えただけで、胃のあたりがムカムカする」と訴えました。その時東洋医学の知識をもっていた博士は「胃のツボを刺激すれば、胃の不快感がよくなるかもしれない」となぜか考えたのでした。そして彼女に「目の下を、軽くタッピングしてみてください」と伝えたのです。2分後、彼女はプールに向かい足を水につけたのです。彼女を悩まし続けていた水恐怖症が消えた瞬間でした。その後何十年たっても水恐怖症はよみがえることはありませんでした。
この出来事をきっかけに博士はTFTの開発に没頭し心理療法として完成させたのです。
東洋医学では「気=エネルギー」がネットワークのように体内をかけめぐっていると考えます。そのルートを「経絡」と呼び、経絡上のポイントを「ツボ」と呼びます。近年、経絡については科学的にも証明され、世界保健機構(WHO)もその存在を認めています。
キャラハン博士が研究を重ねてたどり着いたのが、「思考場」という考えでした。これは、人が何かを考えているときには、思考のエネルギーを集中させている「こころの場所」があるというものです。楽しいことを考えたらこころははずみ、つらいことを考えたらこころが重くなったり憂うつな気分になります。このような不安や恐怖を生み出す原因を博士は「こころのトゲ」と考えました。
自分にとって不快なことや恐ろしいことの思考場には、「こころのトゲ」が刺さっている。そこに思考のエネルギーが集中すると、トゲが活性化され、気の流れが阻害されたり、流れが逆流してしまう。これによって恐怖や不安といった不快な感情が引き起こされる。では、このトゲを取り除くにはどうしたらいいのか?キャラハン博士がたどり着いた答えが、経絡を使って思考場にエネルギーを送りこみ、トゲを除去するというものでした。
さらに次のこともわかってきました。それは「ひとつの症状に対し、正しいツボを正しい手順で刺激することで、『こころのトゲ』を抜くことができる」ということでした。つまり症状別で手順が異なるわけです。
TFTは、シンプルで言葉に依存しないという特徴、そしてその高い有効性から、内紛や紛争のPTSD治療にも活用されるようになりました。米国政府機関ではTFTを以下の項目で、効果に対してのエビデンス(証拠・根拠)がある療法であると認めました。
◎個人の回復力・自己概念
◎自律
◎トラウマ・ストレス関連の障害と症状
◎抑うつとうつ症状
◎一般的な機能と健康
◎恐怖症、パニック、全般性不安障害とその症状
◎特定不能およびその他のメンタルヘルスの障害と症状
(以上は、心理学博士の森川綾女先生の著書を参考にしています)
TFTのメリットは、即効性があり副作用がないということ、さらにいつでもどこでも自分で必要なときにセルフケアとしてできるということです。当カウンセリングルームで、ご一緒に「ツボとんとん」の効果を体験していただき、日常のセルフケアとしてご活用願えればと思います。